物流・運送業界の「2024年問題」とは?
働き方改革関連法の施行により、2024年4月以降のトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間までに規制されます。働き方改革はすでに2019年からスタートしていましたが、物流・運送業界は実態を考慮して規制のスタートを遅らせる措置がとられていました。
時間外労働時間が制限されることにより、2025年には全国で約28%の荷物が運べなくなると予想されており、それに伴って運送サービスの低下や、運送事業社の収益悪化、トラックドライバーの収入減少なども懸念されています。
ここでは物流・運送業界の「2024年問題」について概要を解説するとともに、具体的に起こり得る問題点を詳しく解説します。
物流・運送業界の「2024年問題」とは?
まずは、2024年問題がどのようなものかを解説します。
働き方改革により起こる諸問題の総称
物流・運送業界における「2024年問題」とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間が制限されることで起こる諸問題の総称です。
これは働き方改革関連法の施行によるもので、トラックや、バス、タクシーの運転手などを含む自動車運転業務の従事者の時間外労働時間が、休日を除く年間960時間までに制限されます。単純計算で毎月80時間、月22日勤務の場合は1日あたりの時間外労働は3時間半強となります。このことからも、大きな変化があることがわかるでしょう。
この規制により、1日に運べる荷物の量が減り、運送事業者の売上やドライバーの収入も減ることが懸念されており、さらにはドライバー不足が加速する可能性も指摘されています。
2024年問題が発生した経緯
働き方改革関連法による労働時間の規制は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から施行されています。しかし、物流・運送業界は業務の特性上もあり実情がかけ離れているため、他の業種より規制適用を遅らせてきた状況があります。
しかし、こうした猶予も2024年3月末までとなっており、2024年4月からは例外なく適用が開始されます。そのため、物流・運送業界では業務効率を上げる対策が急務となっていますが、小規模事業者の中には2024年問題そのものを認識していないケースがあり、今後の影響が懸念されている状況です。
「2024年問題」によって起こる具体的な懸念とは?
物流・輸送業界では、いわゆる「2024年問題」によって様々な問題が引き起こされることが懸念されています。ここでは、代表的な懸念点をご紹介します。
今までと同じ量の荷物が運べなくなる
2024年問題によるドライバーの稼働時間の減少により、輸送力の供給不足が起こり、今までと同じ量の荷物が運べなくなる可能性があります。野村総合研究所による試算では、2025年には全国で約28%、2030年には約35%の荷物が運べなくなると指摘されています。
特に東北地方や四国地方は事態が重く、2030年にはそれぞれ40~41%程度の荷物が運べなくなると試算されています。もっとも深刻な秋田県では、2030年にマイナス46%と試算されており、たった6年で物流量がほぼ半減してしまう可能性があります。
運送サービスの質が低下する可能性がある
現在に比べて運べる量が少なくなることで、運送サービスの質の低下も懸念されています。
例えば、今まで翌日配達できていた荷物が翌々日配達になることや、配送料金の大幅な上昇、さらには主に東北地方などの人口の少ない地域が離島に準じた内容になり、運賃の上昇と配達の遅れが同時に起こる可能性があります。
それにより、今まで翌日手に入っていたものが翌々日になったり、場所によっては1週間近くかかったりするケースが出てくるでしょう。また、今まで通りの日数で運びたい場合、運賃が高くなり企業にとって負担となることが考えられます。
長距離輸送を受けられる事業者が減ってしまう
2024年問題によってドライバーの時間外労働時間が制限されると、ドライバー1人が1日に運べる距離が短くなります。そのため、運送事業者によっては今まで同様の長距離輸送を引き受けられないケースが出てくるでしょう。
配送ルートの最適化や、同業他社との協業などでの解決が期待されていますが、それらの準備に手間取った場合、各地方に支店を持ち、すぐに長距離輸送に対応できる大手の運送事業者に業務が集中する可能性があります。また、大手の運送事業者に業務が集中した結果、運送がパンク状態になることも考えられます。
物流・運送事業者の収益悪化
1日に運べる荷物の絶対量が減ることで、物流・運送事業者の売上が減少し、収益が悪化することが予想されています。特に、中小の運送事業者は運賃を上げることで価格競争に敗れる可能性があるため、簡単に値上げができないこともあるでしょう。
また、ドライバー1人ひとりの稼働時間が短くなることから、同じ運送量を維持しようとした場合ドライバーを増やす必要があります。しかし、すでに現時点でドライバー不足が起きているため、ドライバーをさらに確保するためには賃金や待遇のアップが必要です。その結果、人的コストが増加し収益が悪化することも予想されます。
ドライバーの収入減少
2024年問題によるドライバーの収入減少は、主に2つの原因が考えられます。ひとつは時間外労働時間が単純に短くなることで、受け取れる残業代が減ることです。今まで長時間残業することで十分な収入を得ていたケースでは、2024年4月からいきなり影響を受けることになります。
もうひとつが、物流量の減少によって勤務先の収益が悪化し、今までと同等の給料が受け取れなくなることです。収益の状況によっては人員削減や倒産などが起こる可能性があり、雇用そのものが不安定になる恐れもあります。
「2024年問題」への対応策とは?
2024年問題への対応は、運送事業者の努力だけでは限界があります。物流は社会経済活動に必要不可欠なものであり、荷主企業をはじめとする利用者も一体となって取り組むことが必要です。
荷主事業者の対応策
荷主事業者(貨物の輸送方法等を実質的に決定している事業者)は、荷待ち・荷役作業の時間短縮が急務となります。
トラック事業者は、荷主や物流施設の都合で荷物の積み下ろしを待つ時間や、指示を待つ時間がどんなに長くても待機していなくてはなりません。しかし、現場によっては3時間や6時間といった事例が報告されており、業務効率化に悪影響を与えています。
これらの事態を重くみた国土交通省は、荷待ち・荷役作業等にかかる時間を計2時間以内とするルールを策定しました。ここでは、荷主事業者に対し、荷待ち・荷役作業の時間を短縮するとともに、物流事業者が法令に基づいて事業を遂行できるよう配慮を求めています。
2024年4月以降はドライバーの時間外労働時間が大きく制限されることから、荷待ち時間を短縮することは必須といえます。荷主事業者は、速やかに対策を始める必要があるでしょう。
トラック事業者(運送事業者)の対応策
トラック事業者が取り組めることとして「中継輸送」や「共同輸配送」があります。
中継輸送とは、1人のドライバーがひとつの工程を担当するのではなく、複数人でひとつの工程を担当することを指します。これにより、時間外労働時間が制限された後も長距離輸送が可能になります。しかし、中継輸送ができるのは、支店があり人員とトラックの配置がある程度柔軟にできる運送事業者のみです。
共同輸配送とは、納品先が同じ物流・輸送業者が連携して、共同で配送業務を行う取り組みのことをいいます。これにより、トラックの積載効率が高まるとともに、コスト削減にも対応できます。この方法であれば支店を持たない運送事業者同士が連携して、長距離輸送に対応できる可能性があります。
また、トラック等の自動車で輸送されていた荷物を、鉄道や船舶へ転換する「モーダルシフト」という考え方もあります。ドライバー不足の解消が見込まれ、長距離輸送にも対応できるなどのメリットがありますが、鉄道会社や船舶会社などとの協業なども視野に入れる必要が出てくるでしょう。
「2024年問題」に対応する
カシオの物流倉庫管理ソリューション
物流2024年問題に対応するため、カシオではトラックドライバー向けに使いやすいハンディターミナルをご用意しています。
荷物の貨物追跡業務では、トラックへの荷物の積載や荷下ろしの度にハンディターミナルで伝票番号を読み取る必要があります。これにより現在の積み荷の所在地や配達予定日などがわかるため、荷主にとっても大切な業務です。
トラックドライバーの業務負担軽減のためにも、この業務に使用するハンディターミナルは、使いやすく、持ちやすく、素早いスキャンなどが必要になります。このあたりのポイントをおさえたモデルが、ハンディターミナルDT-X450です。
特にトラックドライバーの方々から評判が良かったポイントは、軽量で持ちやすく操作しやすいこと、スキャナの向きが60度の下向きモデルで地面に置いた段ボールなどが読みやすいことと、背面トリガーで狙った方向にスキャンしやすくボタンが押しやすいというところです。
大手運輸業にも採用されていますので、導入事例もご覧ください。
DT-X450カタログ
DT-X450のPDFカタログを下記「ダウンロードはこちら」ボタンより簡単な情報をご登録いただくことでダウンロードいただけます。
また、カシオでは、ハンディターミナル事業38年に亘るノウハウと様々な業種での提案経験を活かしハード/ソフト/保守 ワンストップでお客様の業務課題解決をお手伝いいたします。ハンディターミナルのOS変更、WindowsからAndroid OSへの変更で注意すべきポイントや、ソフト開発など含めていろいろご提案させていただきます。
導入支援、運用支援含めて業務の課題など気軽にお問い合わせください。