ハンディターミナルの活用・応用は事業成長を後押しする可能性に満ちている
お客様に沿ったハンディターミナル用アプリケーション開発で成長をサポート
text by月刊「LOGI-EVO」編集長 片岡信吾
月刊「LOGI-EVO」は、2021年8月に創刊されたあらゆる産業に関わるロジスティクスの総合専門誌です。
(株)システム情報センター
システムソリューション事業本部
統括二部
部長
高田 勲 氏
統括二部
第一グループ リーダー
星 勇一郎 氏
トラックドライバー不足に起因する物流危機に対し、政府が遅まきながら矢継ぎ早に対策を打ち出している。その内容の是非はともかく、物流が止まることの重大性はかねてから指摘されてきたとおりで、この政府の対応が都度ニュースで取り扱われたことにより、一般的にも認識されるようになってきている。ただ、人手不足はトラックドライバーばかりではない。工場や物流拠点、店舗など、サプライチェーン上の多くの拠点で作業を担う人材が不足しているのが実態だ。物流危機は、言い換えればサプライチェーンの危機にほかならない。これを乗り切るためには各拠点の省力・省人化への取組が必要不可欠だが、何よりDXを推進することで生産性向上を図るほか、自動化設備・機器投資の実効性を高めるオペレーションの改善を進めることが重要だろう。
一方、DXへの取組が拡大するなか、現場オペレーションの生産性向上を図るうえで、ハンディターミナルやコードリーダなどの情報端末機器を有効活用するためのアプリケーションソフト開発の重要性も再認識されてきている。そこで、今回は、ハンディターミナル向けソフトウェアやアプリケーションソフトウェアの開発で豊富な実績を持つシステム開発ベンダー、(株)システム情報センターのシステムソリューション事業本部 統括二部 部長である高田勲氏と同統括二部 第一グループ リーダーである星勇一郎氏にインタビューし、我が国のIT活用・DX推進の現状や課題、同社の事業展開、製品、今後の計画などについて話を聞いた。
お忙しいところ、大変にありがとうございます。まずは貴社の概要から伺いたいと思います。
高田:当社は1975年に設立されて以来50年近く、IT分野で事業を展開してきました。創業当初はデータ入力(データエントリー)サービスを主力事業としてスタートし、現在はシステム開発、ダイレクトメールサービス、事務代行サービス、人材紹介・派遣サービスまで幅広い事業を展開しています。データ入力サービスでデータ入力していくと、そのデータの保守・メンテナンスが必要になりますし、さらにそのデータを活用してダイレクトメールを発送するとか、システムやアプリケーションを開発するといったように話が進みます。
このように振り返りますと、現在主力のシステム開発の淵源が創業以来の事業であるデータ入力サービスにあったというのもうなずけるところかと思います。データ入力サービスでは、OMR(光学式マーク認識)の読取装置を早い段階から導入しており、Jリーグ・オールスターゲームのファン投票の集計をお引き受けした実績があります。こうしたデータ入力サービスの大型案件等で蓄積してきたノウハウがハンディターミナルによるデータ収集にも活かされており、その意味でもシステム開発が当社事業の草々の系譜に連なっていることを実感します。
我が国でもようやくIT活用・DX推進が加速しようとしています。ハンディターミナルを活用する現場でも業務革新の流れのなかでこうした取組が進んでいますが、この状況に対するご認識をお聞かせください。
星:ハンディターミナルを活用してデータを収集するということについてはだいぶ浸透したと思います。近年はさらに、収集したデータに基づいて自動発注システムを採用したり、あるいは棚卸の際の誤差を抑制する取組を進めていたりといったように、収集したデータを事業の成長に活用する動きが広がってきています。物流業界ではすでにバーコードを使ってリアルタイムの荷物の位置を追跡できるシステムの導入が進んでいますが、このように収集したデータを自社の中だけでなく、お客様へのサービスとして活用していく段階に進んでいると考えています。その意味では、バーコードや2次元コード、あるいはRFIDとハンディターミナルなどの情報端末機器を組み合わせたデータ収集の仕組みは、様々な業種業態の事業成長を後押しする可能性に満ちていると見ています。
高田:現在、物流2024年問題が取りざたされていますが、この問題の解決についてもこうしたデータ収集・活用がその原動力になります。この問題はトラックドライバーが輸配送需要に対して不足することですので、トラックの積載率向上が効果的な対策の1つとなります。それには物流系ITソリューションの導入や業務におけるDXの推進などの取組が欠かせませんが、その基礎として、各ロケーション・工程でのデータを収集し、輸配送状況をリアルタイムで把握できる体制を構築しておく必要があるというわけです。実際、自動認識技術を活用したデータ収集の整備が進み、これを基礎とした様々な対策が物流業界では加速しようとしています。
星:一方、最近では物流拠点でも自動化設備・機器の導入が進展していますが、完全自動化の状態に行き着けば、ハンディターミナルのような作業者個人が携帯する情報端末機器の必要性はなくなるでしょう。ただ、実際に完全自動化できるような拠点は限られており、現実的には、ハンディターミナルのような情報端末機器によるデータ収集を前提とした物流ソリューションに進むケースが多くなるのではないでしょうか。
確かに完全自動化に踏み切れる物流拠点は限られますね。ハンディターミナルのような情報端末機器を活用した物流ソリューションの市場は成長途上ですし、応用展開の余地もまだ多くあると思います。では続いて、貴社システム開発事業についてご説明いただけますでしょうか。
高田:当社はハンディターミナルやPC、PDA、タブレットなどの情報端末機器を導入されるお客様のご要望に沿うとともに、これまでの経験や知見を踏まえた最適なアプリケーションをフルスクラッチで開発し、提供させていただいています。また、導入後の運用・保守はもとより、当社他部門との連携により、データ入力、プリント発送など、一貫したデータ処理に対応することも可能です。最近では情報端末機器のキッティング作業をお任せいただくケースも増えており、おかげさまでこうした当社の総合的な対応を高く評価していただいております。
星:ハンディターミナル導入時のアプリケーション開発に止まらず、お客様がハンディターミナルを新機種に切り替えされる際のアプリケーション変更まで終始一貫して対応させていただいている点も当社の特長と言えます。短納期対応や複雑な仕様・設計などにも柔軟に対応しております。
高田:ハンディターミナルが我が国で導入された草々のころからアプリケーションの開発に携わってきた歴史が当社にはあります。ハンディターミナルは現場で活用される情報端末機器ですから、現場での使いやすさや運用のしやすさなどを考慮した開発が求められます。そのような経験を最大限活用していくことで、今後も「お客様にやさしい」ソフトウェア開発企業でありたいと考えています。
我が国のハンディターミナル市場の歴史の中でアプリケーションについては貴社の実績がそのまま重ね写しになっているように感じます。続いて、貴社のお立場から当社のハンディターミナルに対するご感想をお伺いできますでしょうか。
高田:カシオ計算機さんと当社のお付き合いは数十年と大変長きにわたっています。ハンディターミナルメーカーとアプリケーション開発ベンダーとしての連携関係に加え、当社はカシオ計算機さんのハンディターミナルの販売代理店でもあります。実際にこれまでカシオ計算機さんのハンディターミナルの受注や、アプリケーションの開発で数多くの実績があり、カシオ計算機さんのことはよく存じ上げているつもりです。新製品開発のプロジェクトに当社を参加させていただいたこともありますが、当社の意見を大事に聞いていただき、販売代理店やアプリケーション開発ベンダーを本当に大切にされていると感じました。
また、特にハンディターミナルの新機能開発において、カシオ計算機さんは常に国内メーカーの先頭に立たれているという認識をもっています。昨今話題のAndroid™ OS製品もそうですが、WindowsCE製品についてもいち早く市場に新機種を送り出されていたことを記憶しています。そのほか、ワイド画面やハンドリング性能、ロングレンジ対応など、その実績の足跡は挙げればきりがないほど素晴らしいものだと思います。
お褒めいただき、誠にありがとうございます。当社のことをこれほどまで詳しく知っていただき、感激です。最後に貴社の今後のご計画についてお聞かせください。
高田:当社が開発した作業ミス防止ツール「ポカヨケツール」についてカシオ計算機さんと協業しており、これらツールの導入を進展させたいと考えています。このツールはハンディターミナル用のアプリケーションで、部品の棚入れの際の誤投入や、オーダーと異なる商品の出荷、生産工程での投入原材料の間違いなどを、バーコードのスキャニングにより確認し、防ぐというものです。カシオ計算機さんが自社のハンディターミナルと合わせてパッケージ化しており、既存対応機種の「DT-970」に加え、最新機種の「DT-X450」でも対応できるように準備していただきました。現場で起こりがちなミスを、日ごろ使っているハンディターミナルの活用で簡単に防止できるツールですのでお客様にも喜んでいただいており、カシオ計算機さんとの連携強化でさらにその導入が進むことを期待しています。