<物流施設関連動向>2024年度1月~3月(後編)
text by月刊「LOGI-EVO」編集長 片岡信吾
月刊「LOGI-EVO」は、2021年8月に創刊されたあらゆる産業に関わるロジスティクスの総合専門誌です。
危険物対応や低温対応など目的特化型も増加
競争力と持続可能性のある物流体制を目指す
かねてより危機が叫ばれていた物流2024年問題だが、ついにその渦中となる4月を迎えた。春闘の結果、上場企業が一斉に大幅な賃金アップを打ち出し、日本経済の先行きに一筋の光明が差した格好だが、物流が滞ることになれば、状況は再び暗転する。そのため、物流2024年問題への対応を踏まえた物流施設への投資活動は活発に推移しており、特に自動化設備導入、DXへの取組、環境対応などが進展した。そこで本稿では、2024年1月~3月における物流施設に関連する投資活動について注目すべきものを前編と後編に分けて紹介する。
■西濃運輸(株)
神奈川県座間市に同社2棟目の危険物倉庫「ロジクロス座間」を開設/(株)阪急阪神エクスプレスとの共同運営で近年需要の高い危険物物流に対応
セイノーホールディングス(株)(セイノーHD)傘下の西濃運輸(株)は、神奈川県座間市に延床面積882.40㎡(約270坪)の危険物倉庫「ロジクロス座間」を開設した。
新倉庫は、2023年9月に開設した厚木物流倉庫に続く西濃運輸2棟目の危険物倉庫。EV普及に伴うリチウムイオン電池のほか、近年需要が高い危険物物流に合わせたロジスティクスサービスを、資本・業務提携関係にある(株)阪急阪神エクスプレスと共同運営していく。立地については、東名高速道路の「横浜町田IC」や圏央道の「圏央厚木IC」付近に位置し、神奈川・首都圏の主要エリアに限らず、関東や中部、関西の広範囲への配送にも適する。2025年には、相模原市内に新たに危険物倉庫の開設を予定しており、全国展開も視野に入れながら、顧客の課題解決と事業成長に貢献していく。
なお、セイノーHDは、2023年4月にオートモーティブ・バッテリー物流事業部を立上げ、電動化へシフトする自動車業界をはじめ、建機・農機などの駆動系分野を対象に、西濃運輸の全国ネットワークを活かした輸送、危険物倉庫の運営、リサイクルに伴う梱包、回収物流などを提案している。
■SBSグループ
SBSグループ最大の物流拠点「野田瀬戸物流センターA棟」が竣工/施設内にはECプラットフォーム事業の戦略拠点「EC野田瀬戸物流センター」を開設
SBSホールディングス(株)は、SBSグループが建設を進めていた「野田瀬戸物流センターA棟」が竣工し、2024年2月16日に竣工式を行ったと発表した。
SBSグループ各企業が合同で運営する初のマルチ倉庫となる同施設は、地上4階建て、延床面積 5万332 坪(約 16万6,386 ㎡)を擁するグループ最大の物流拠点。常磐自動車道「柏IC」から4km以内に位置し、関東一円はもとより東北方面に容易にアクセスできる利便性がある。同施設はドライ倉庫、危険物保管庫、冷凍冷蔵設備を備え、あらゆるニーズへの対応が可能。庫内では、棚搬送ロボなど自動化機器を本格導入し、自動化・省人化を追求するほか、屋上に 8,200 枚の太陽光パネルを設置し、同施設の日中の動力をすべて再生可能エネルギーで賄えるようにしており、低炭素社会実現に貢献する施設とした。
同施設のうち1フロア約1万坪は、グループ初となるECプラットフォーム事業の戦略拠点「EC野田瀬戸物流センター」とし、EC事業者が相乗りで物流ロボットやマテハンを利用できる共同利用型センターとする。同センターは、常温のほか、3温度帯や定温保管機能を備え、細かい流通加工に対応する各種設備や、薬店・撮影スタジオも併設しており、200を超えるEC業務のサービスメニューにも対応可能。アパレルや食品、化粧品、健康食品、医薬品、雑貨など、幅広い業種のEC事業者に多彩なメリットを提供する。
■サンワサプライ(株)
東日本エリアをカバーする物流拠点「東日本物流センター」が稼働/AMR導入により業務効率の最適化と作業者の負担軽減を実現
サンワサプライ(株)は、東日本エリアの物流拠点「東日本物流センター」が稼働したと発表した。
新拠点の稼働は、物流業務の効率化・顧客ニーズへの対応のほか、より質の高い配送サービスを提供するため、「東京物流センター」を新築移転し、こぎ着けたもの。時代や市場の変化に合わせて新たな分野・カテゴリーの新製品を数多く投入するにあたり、従来倉庫から大幅に規模を拡大するとともに、設備を強化した。在庫スペースの確保と、より効率的な物流拠点の運営実現のため、規模を拡大した新拠点に集約することで、業務効率を引き上げ、従来以上に迅速かつ円滑に製品を届けられる体制を整えた。
倉庫内では、ピッキング作業をアシストするAMRを導入し、業務効率の最適化と作業者の負担軽減を実現。トラックの配車システムも導入しており、トラックの集中や長時間待機といった2024年問題の解決にも取り組む考えだ。
屋根にはソーラーパネルを搭載し、太陽光発電を導入。物流センター運営にかかる電力をサポートするだけでなく、地球環境への負荷軽減など、SDGsにも貢献する取り組みを実施する。倉庫内には非常用発電機も備えられており、災害時にもBCP対策として、蓄えた電力を非常用電源として活用できるものとした。
なお、同社は同施設所在地の四街道市と提携し、災害発生時には同施設を避難施設として使用できるものとしている。
■鴻池運輸(株)
千葉県習志野市のテクニカルセンター「テクノロジス幕張」が完成/業務⽤空調機据付工事現場の生産性向上、労働負荷軽減、環境負荷低減に貢献するサービス主要拠点
鴻池運輸(株)は、空調機改装のテクノロジーとロジスティクスを掛け合わせた同社独自のサービス「Konoike-Multi Vendor System(K-MVS)」の主要拠点となるテクニカルセンター「テクノロジス幕張」(千葉県習志野市)が完成し、4月1日に本稼働すると発表した。
K-MVS は、中期経営計画の重点 4 項目の一つ「⾰新への挑戦:技術の活⽤と DX ならびに協業による挑戦」の一環として取り組んでいるサービス。空調機メーカー、サブコントラクターが業務⽤空調機を据え付ける場合の工事現場における⼈材不足、納入車両待機時間、余剰在庫、CO2 削減等の様々な課題解決に対応するもので、これまで同社既存拠点で提供してきた。同施設は、首都圏の堅調な再開発を背景とする業務⽤空調機改装業務の需要増加見込みに加え、一層深刻化する工事現場の生産性向上、労働負荷軽減、環境負荷低減に対する取り組みの強化として、K-MVS の提供体制を増強するため、約 64 億円を投じて2022年11月に着工し、開設準備を進めてきたという。
■(株)カインズ
三重県桑名市に「カインズ 桑名流通センター」が稼働/2024年問題の課題解決に向けて 持続可能な物流を目指す
(株)カインズは、敷地面積、延床面積ともに同社最大の物流拠点「カインズ 桑名流通センター」が本格稼働したと発表した。
新物流拠点は、東名阪自動車道「桑名IC」から約7.5km、「桑名東IC」から約7kmに位置し、全国への広域配送拠点及び名古屋中心地への配送拠点として利便性の高い立地にある。これまで、海外からの荷物は太田流通センター(群馬県太田市)に集約し、全国のTCや店舗に運んでいたが、新物流拠点が西日本エリアのマザーセンターとして荷物の受け入れや配送を担うことで、長距離幹線輸送の削減と店舗物流サービスの効率を大幅に向上させることができる。
新物流拠点は、地上4階建て、延床面積約2万9,000坪の施設で、1階にTC、2~4階にDCを配置し、各設備を連携させたシームレスな自動化を図っている。また、積載床荷重1.5t/㎡に加えて有効階高5.5~6.5mを確保し、危険物倉庫を併設するなど、多種多様な商品の保管が可能だ。構内作業では、荷物の保管や店別仕分け、搬送作業などの自動化を進め、省人化を実現している。
新物流拠点は、環境配慮型物流センターとしての側面を持つ。具体的には、全館にLED照明や人感センサー付き照明を採用したほか、建物屋上への自家消費型太陽光発電設備の導入により、消費電力の100%を再生エネルギーで運営することが可能(最大発電時)。また、パレットの一部には、海洋プラスチックになる可能性のあるプラスチックごみを回収し、リサイクルした素材であるOBP(オーシャン・バウンド・プラスチック)使用している。
従業員の労働環境面にも配慮し、シーリングファンやスポットクーラー、天井カセットタイプの空調設備などにより、適切な室内温度で作業できる環境を整えたほか、従業員の心的負荷をやわらげるため、観葉植物やソファーなどを配置したカフェのような空間を演出にもこだわったとしている。
■澁澤倉庫(株)
千葉市花見川区の飲料物流特化型新拠点「千葉北第三倉庫」が竣工/今後の飲料物流における取扱量拡大、サービス品質向上などに対応するための戦略拠点
澁澤倉庫(株)は、飲料物流の新たな拠点となる京葉配送営業所「千葉北第三倉庫」が竣工したと発表した。
同社は、複数の飲料物流センターを運営し、保管、流通加工、輸配送、クロスドッキングサービス等を提供してきた実績がある。同施設の開設は、今後の飲料物流における取扱量の拡大、ならびに専門性を活かしたサービス品質向上と効率化推進に対応するのが目的。同施設は、千葉市花見区で日本GLP(株)が開発した「GLP千葉北」を同社が1棟全体を賃貸利用するもので、延床面積 は2万3,830.45 ㎡に達するという。
同施設は、同社の飲料物流における戦略的重点エリアと位置づけている千葉北に立地し、同社が培ってきた飲料物流における保管、荷役、物流動線等に関する知見を反映した BTS仕様。自動搬送機「マジックラック」、無人搬送フォークリフトを導入し、保管・作業効率の向上を実現している。
■サッポロホールディングス(株)
サッポロビール(株)が持続可能な物流体制維持・構築に向けて広島県に物流拠点を新設/ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)も物流効率改善で埼玉県に物流拠点を新設
サッポロホールディングス(株)のグループ企業であるサッポログループ物流(株)は、持続可能な物流体制の維持や構築に向けて広島県広島市に「サッポロビール(株)広島物流センター」を新設する。
同社は、2020年頃から全国の配送で150km圏内を上限とする物流拠点再編を推進し、運行管理可視化システムの活用に加え、トラックドライバーの拘束時間短縮に努めてきた。広島の新拠点については、これまで九州日田工場から出荷していた広島県・島根県エリアへの配送を経由させることで、トラックドライバーの長距離運行の緩和とトラックの回転率向上を実現する。
また、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)の食品・飲料配送についても、3月25日に埼玉県加須市に「ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)埼玉加須物流センター」を新設する。これまで「ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)北関東物流センター」(群馬県伊勢崎市)から配送していたエリアの一部を同センターに移管し、配送距離を削減するほか、トラックの発着や庫内作業の集中を緩和し、ドライバーの拘束時間削減を実現していく。
■アマゾン ジャパン(同)
神奈川県相模原市にAmazon物流拠点となるFCを新設/Amazon Roboticsを国内最大規模で導入し、入出荷工程のさらなる効率化を目指す
アマゾン ジャパン(同)は、神奈川県相模原市にAmazon物流拠点となるフルフィルメントセンター(FC)を新設する。AmazonのFCは、相模原市で2拠点目、神奈川県では5拠点目。同施設は、延床面積約15万㎡(東京ドーム約3個分)、商品保管容量約150万立方フィートの規模で、Amazon Roboticsを国内最大規模で導入する予定。Amazon Roboticsや紙袋自動梱包機などの自動化機器活用により、同施設における運営の安全性と、持続可能な物流体制を構築する。
同施設では、1日最大65万個以上の商品出荷を行う。同社は、同施設の新設により、エリアマネージャー、職場の安全・衛生管理者、商品の品質管理者、設備の保全管理者、テクノロジーを使って商品のピッキング・梱包・出荷などを担う作業者など、様々な職種で数千人規模の雇用を創出するとしている。また、地域社会との定期的な交流を通じ、特に子供たちに向けた科学技術分野の学びの機会も提供する考えだ。
2022年の同社の日本への直接投資額は1.2兆円を超え、2010年から2022年までの期間の総投資額6兆円超の約20%に相当するという。そのなかでもAmazon物流拠点のFCにおける自動化への取組は注目度が高く、特にAmazon Roboticsによる入出荷工程の効率化はEC市場の拡大に大きな影響を及ぼしている。Amazon Roboticsは、入出荷情報に基づいて「Drive(ドライブ)」と呼ばれるロボットが「Pod(ポッド)」と呼ばれる専用の商品棚を移動し、作業者の業務をサポートするもの。相模原市の新FCでは、国内最大規模となる約3,000台のドライブと約3万5,000台のポッドを導入する予定だ。これにより、商品の棚入れ・棚出しのさらなる効率化に加え、格納スペースの節約も可能となることから、在庫保管量を従来の固定棚に比べて最大約40%増やすことができ、商品の品揃え拡充も可能となる。
一方、同施設での紙袋自動梱包機の導入は、梱包資材削減の取組の一環。段ボールケースの代わりに紙袋で配送する商品を増やすなど、梱包の簡素化をさらに進める。梱包の簡素化で、梱包の開封やその後の処理にかかる手間も減らせるなど、副次的なメリットもあるという。
■日本シグマックス(株)
大阪市住之江区の「大阪物流センター」が稼働開始/物流倉庫2拠点体制で物流2024年問題や緊急時の商品安定供給に対応
日本シグマックス(株)は、大阪府大阪市住之江区に新設した「大阪物流センター」を稼働させた。物流の2024年問題による輸送距離制限、および緊急事態発生時の商品の安定供給への対応を目指しての取組。同社は医療用品を取り扱っており、これまでは「柏物流センター」(千葉県)から全国に配送を行ってきたが、今回の新物流倉庫稼働により、今後は2拠点体制でより最適な拠点から商品を発送していく。
同社が扱う医療用品は、その性質上、流通過程を含めた安定供給体制の構築が求められているが、物流業界におけるトラックドライバーの不足や高齢化、物流2024年問題、燃料費の高騰などの課題が顕在化し、商品の安定配送にリスクが生じている。同社は、これら課題への対応に加え、災害等の緊急事態発生時の安定した商品供給体制を確立するため、かねてから西日本エリアでの物流拠点の準備を進めていた。今回の新物流倉庫稼働に伴い、より配送先に近い拠点から商品を出荷することできるため、同社では、トラックの使用燃料の削減、ドライバーの運転時間の短縮などを通じ、物流2024年問題の解決にも貢献できるとしている。
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