-ソフトウェアの凄ワザ-
Android™️を知り尽くしているからこそできる
かゆいところに手の届くソフトウェア開発
カシオ計算機株式会社
稲垣 嘉洋
開発本部 第一開発統轄部 室長
信頼性を最重視する開発姿勢
現在はソフトウェア開発全般を束ねるマネージャとして活躍する稲垣は、ハンディターミナルとスマホの一番の違いは「信頼性」であると話す。「スマホが新しさや性能の高さを競うのに対し、ハンディターミナルは、メカ的な面では頑丈さ、ソフトや通信では安定性や電池が長持ちするなど、業務用端末としての信頼性が重要であると考えています」。 ハンディターミナルを活用する企業では「この業務を効率化したい」など端末への要求が定まっている。さらに業務に使用するアプリケーションは自社で開発する場合も多い。そうしたニーズに合致した使いやすい端末であることも重要なファクターだ。
「導入時のキッティングをいかに効率化できるか、そういった保守・運用を支援するソフトウェア開発にも力を入れています」。 たとえば、「ファーストキッティング」というツールは、予めセットアップ内容を準備しておけば、開梱してバッテリーを装着し電源を入れるだけでアプリインストールや各種設定などの基本的なキッティングを自動化できる。 「大量導入時のキッティングの手間を大きく削減できる、究極の手間なし機能として仕上げました」と稲垣は胸を張る。
「お客様のために」が工夫のしどころ
ハンディターミナルのOSがWindows CEからAndroidに変更されたことで、ソフトウェア開発はどのように変わったのだろう。 「Windows CEの頃は独自機能の実装は比較的容易でしたが、Androidになってからそれがやりにくくなっているのは事実です」
カシオの現行機種はGoogleのGMS認証を取得している。それだけAndroidに精通している証である一方、それが制約となり認証から逸脱する機能の実装が難しくなっているのが現状だ。使いやすさを追求し、カシオとしての独自性を打ち出そうとすると高いハードルになるが、彼はその点こそが工夫のしどころと話す。 「Androidの知る人ぞ知る機能を活用してお客様に便利な機能が実現できるという場合もあるのです。そうしたノウハウに長じているのは、業務用ハンディターミナル37年、Android11年の開発経験あってこその強みです」
ノウハウや知見を活用し、ユーザーのかゆいところに手の届くソフトウェアを開発した実例としては「Casio Enterprise Browser」がある。解像度の低い端末向けに作られたWEBサイトを高解像度の端末で表示させると、左隅に小さく表示されたり見切れたりしてしまう問題を、端末側の設定できちんと全画面表示できるようにしたツールだ。 今後、どのような業務用ハンディターミナルを開発していくのか、展望を聞いた。
「これまでは、お客様のお困りごとをお聞きし、それに対応していくということを積み重ねてきました。今後はお客様の困りごとを先回りして『こんなことにお困りではないですか?』と提案できるようなソフトウェア、ツールを用意していきたいですね」と語る。