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業界トピックス【物流拠点に再編成の動き】 | ハンディターミナル | CASIO

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サプライチェーン志向で生産・物流拠点に再編成の動き

text by月刊「LOGI-EVO」編集長 片岡信吾

月刊「LOGI-EVO」は、2021年8月に創刊されたあらゆる産業に関わるロジスティクスの総合専門誌です。

プロローグ

事業活動における物流拠点戦略は、物流機能としての輸配送における機動性の強化に加え、近年はBCP対策としての観点から、納入先や消費地に近い位置に分散する形で設置するという動きが一般化している。だが、ここにきて製造業で在庫適正化や在庫コスト削減に加え、生産・物流を一体的に連携させるサプライチェーン志向の拠点再編成により事業全体の競争力を強化しようとの展開も浮上している。

一方、この拠点再編は自動化を推進するため設備投資を加速させる要因ともなっており、この部分でも興味深い現象であると言える。そこで今回は、その具体的な事例を示しつつ、今後の生産・物流拠点戦略と、この戦略に基づく自動化設備投資の方向性を探っていく。

1.生産・物流拠点の一体化へ

(1) (株)資生堂の展開

(株)資生堂は昨年9月、大阪府茨木市に新サプライチェーン拠点(写真1)を開設し、稼働させた。同社プレステージスキンケア製品の生産を担う大阪茨木工場、物流を担う西日本物流センター(WDC)、さらに「SHISEIDO BEAUTY SITE(一般向け見学コース)」と「コンシューマーセンター」といった4つの機能を備える新たなコンセプトのサプライチェーン拠点で、約635億円を投じて完成させた。工場と物流センターの併設は同社では初めてで、生産・輸送に関わる作業効率向上、輸送に関わる環境負荷低減を志向した拠点となっている。

写真1 大阪茨木工場/西日本物流センターのメインエントランス 写真1 大阪茨木工場/西日本物流センターのメインエントランス

この新サプライチェーン拠点設立は、「100年先の未来を見据えて資生堂の高品質なものづくりを発信する拠点をつくる」というビジョンのもとに進められた。市場への柔軟な製品供給と、高い経営効率を実現することで、中長期経営戦略「WIN2023 and beyond」の目標達成につなげるもの。特に同社のスキンケア製品をグローバル展開し、持続的な成長を図っていくための製品供給体制を整えるという意味を持つ。

(2) 花王(株)の展開

花王(株)は今年3月、豊橋工場を生産・物流機能一体型サプライチェーン拠点に変革し、柔軟で効率的な生産体制とサステナブルな新物流モデルの構築を目指す「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」計画を発表した。これは同社がかねてから進めている生産・物流体制改革の一環で、2023年上期に竣工・稼働する予定だ。新サプライチェーン拠点では、DX・デジタル化に加え、労働市場の変動にも耐え得る自動化設備の導入も積極的に進める。

豊橋工場では、ビューティケア製品やコロナ禍で需要が高まった消毒製品など、少量多品種商品を生産している。人手も含めた細かい作業で製品供給を担うフレキシブル性が同工場の特長で、同社では次世代型工場のモデルになり得ると認識。本計画では、同工場の生産能力強化という課題が最初にあり、これに伴う在庫量増加への対応が物流体制見直しのきっかけになった。物流については、2024年問題や環境問題への対応に加え、豊橋エリアにおける雇用確保の問題を乗り越えて、サステナビリティを実現していくという課題を抱えている。その際、単なる倉庫建設(写真2)に止まらず、豊橋工場敷地の有効活用を検討する中、生産・物流のあるべき将来像を探っていくことになった。

写真2 豊橋新倉庫の完成予想図 写真2 豊橋新倉庫の完成予想図

2.生産・物流拠点一体化における自動化設備投資

(1) (株)資生堂の展開

(株)資生堂・大阪茨木工場はプレステージスキンケア製品の生産拠点で、生産設備の拡充を順次進め、2023年以降、年間最大1億6,000万個の生産能力を見込んでいる。品質管理面でも医薬品レベルのISO22716に準拠したハード&プロセスを実現しており、匠の技術との融合によるメイド・イン・ジャパン製品を供給する最新鋭の生産拠点だ。 同工場は「人に優しい働きやすい生産現場」との生産現場設計コンセプトのもと、ロボットと現場作業者との協働による高い生産性を確保している。バルク(充填された状態で1tクラスの重量の大型タンク)搬送には、AGV(2台)を導入し、自動的に充填ライン先頭までバルクを搬送する仕組みとした。また、生産に必要な材料はラック倉庫やベルトコンベヤで必要な時に必要な数量がラインに自動供給されるJIT(Just In Time)システムも導入。材料搬送にかかる現場作業者の作業負荷を大幅に軽減している。

WDCは、パレット自動倉庫を挟んだ形で大阪茨木工場と一体化している。WDCも大阪茨木工場も7階建てだが、WDCは倉庫としての機能から天井高が必要となるため、2階と5階をスキップする形の5層構造とした。建屋面積は4万9,000㎡で、中間に位置するパレット自動倉庫は国内最大規模の約3万3,000パレットの収容能力をもつ。この3万3,000パレットは大阪茨木工場と共有しており、工場棟で8,000パレット、物流棟で2万5,000パレットを使用する形となっている。 大阪茨木工場で生産された製品は、充填・仕上の最終工程からベルトコンベヤで6階フロアを通って物流棟に自動搬送される。その後、パレタイジングロボットでパレタイジングされ、自動倉庫に格納されるレイアウトで、工場棟の生産現場から物流棟の倉庫までの一連の搬送・格納工程が全て自動で行われる仕組みだ。

他の工場で生産された製品は、4階のトラックバースで配送車両から荷降ろしを行い、そのまま自動倉庫に格納される。6階と7階はMH機器や什器を設置せず、ネステナーやラックを組んだ平置きの格納エリアとした。4階から1階までは全てベルトコンベヤでつながっており、同社国内工場と物流で使用している折り畳み式コンテナにより一気通貫で製品を搬送・保管している。

パレット自動倉庫に格納・保管された製品の出荷では、デパレタイジングロボットでケース単位にデパレタイズされた後、ケース保管用のマルチシャトル経由で各工程へ自動搬送し、最終的にトラックバースから製品を出荷する。出荷工程については、マルチシャトルを使用した「GP3(Goods To Person for Pick and Pack)」を導入している点がWDCの特徴。GP3は、商品ピッキングと梱包・ラベリングが定点&歩行レスで行える出荷システムで、同社の出荷業務では従来主流だったカートピッキングに代わるものだ。カートピッキングは重いカートを押しながらの歩行作業で、現場作業者の身体的負荷が大きく、GP3導入で現場作業者の身体的負担が大幅に軽減された。GP3については、世界初と言える要素が2点あるという。一つは、商品梱包に使用する段ボールケースを製函した状態でマルチシャトルに格納しており、出荷ステーションに自動的に供給するというオリジナル設計が施されている点。もう一つは、マルチシャトルをワンフロアでなく、3階と4階の2フロアでGP3利用できる仕様とした点で、こうした導入の仕方は過去に例がないとしている。

(2) 花王(株)の展開

花王(株)が「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」計画に基づいて2022年2月に着工した新倉庫(建築面積:約7,150㎡)は、120万梱の保管能力を持つ自動倉庫を据え付ける予定。隣接する工場にはすでに少量多品種生産に最適なロボットが導入されており、需要変動に応じたフレキシブルな生産体制が構築されている。 工場から新倉庫への製品搬送は無人トラックで行う。倉庫棟には、ケース仕分けロボットやAGV、無人フォークリフトなどの先端技術を利用した自動化設備を数十台規模で導入するほか、トラックの荷物の積み降ろしを自動化するトラックローダーも導入する。仕分け作業場所は固定せず、仕分けロボットとAGVが自在にパレットへの積み付けとパレットからの荷卸しが同時に行えるものとし、4万梱/日の入出荷能力を確保する計画だ。

同社は、経済産業省資源エネルギー庁公募事業である令和3年度「AI・IoT等を活用した更なる輸送効率化推進事業」でAI搭載自動運転フォークリフトの実証事業を関係4社と共同展開しており、この事業を通じて培ったノウハウも生かす。この実証事業と連携し、積み降ろし作業の自動化・無人化を図るほか、バース予約システムなどの導入によるトラック入退場のスマート化でトラック待機時間を削減し、ドライバーが安心して仕事に従事できるホワイト物流も推進する。同社は、物流倉庫のロボットフレンドリーな環境整備に向け、ロボット革命産業IoTイニシアティブ協議会の物流テクニカルコミッティーにも参画しており、こうした一連の自動化・無人化への取組を紐づけ、同計画の目的を達成する方針だ。 豊橋新倉庫は少量多品種生産品目が対象でSKU増減への対応が必要なことから、フレキシブル性を備えたロボットの導入を決めた。ロボットは、新倉庫の2階に荷捌場を設け、このエリアで稼働させるものとし、ロボットの処理能力の範囲内でSKUの増減にフレキシブルに対応するとしている。

現状は豊橋工場で生産した製品を豊橋LCに輸送して保管しているが、本計画により豊橋工場と豊橋LCが一体化すればその輸送が不要となる。豊橋工場内の物流機能強化により、全国への効率的な輸送も可能になることから、コスト削減に加え、CO2削減も見込める。工場とLCの連携が密になることで、在庫数量もより適正化が図れる。また、自動化設備導入により、現場作業者確保という不安定要素が排除できるほか、既存スタッフがよりクリエイティブで付加価値の高い業務に従事できる点も大きなメリット。ロボットにより昼夜を問わず作業を進められるため、入出庫処理能力の増強も見込めることから、強靭でフレキシブルな製品供給体制が整う。また、この機にDXを促進することで、高度なサプライチェーン管理が可能になり、生産・物流計画への有効なフィードバックも見込めるという。

3.全体最適化によるバリューチェーン構築への道筋

生産・物流拠点は、これまで企業戦略の方向性により集中と分散という真逆の施策が採用されてきた。自社だけの問題であれば、いずれも置かれている状況に即したもので一時的には「正解」だったに違いない。

しかし、コロナ禍で痛感したことは、調達も含めサプライチェーンが寸断されてしまえば、たちまち機能不全に陥るということだ。ゆえに自社拠点内はもとより、サプライチェーンに連なる調達先や物流協力先、あるいは供給先も含めた全体最適化を図り、あらゆる事態に耐え得る強固なバリューチェーンを構築することが重要になる。その点、両社の取組・計画は、製造業として生産と物流の起点となる拠点の一体化により、まずは自社内において強靭でしなやかなサプライチェーン実現の基礎を固めるものであり、バリューチェーン構築への道筋を示すものと言うことができるだろう。

我が国経済は現在、コストプッシュインフレに見舞われている。輸入に依存するエネルギーや食糧などは為替も要因の一つであり、ウクライナ紛争の影響もあるが、コロナ禍で世界的にサプライチェーンが機能不全に陥り、その状況が未だに回復していないことが主要因のように思われる。その意味でもサプライチェーン改革が欠かせないことは明らかであり、コロナ禍により招来したこの事態を直視し、全体最適化につながる拠点の再編成にも取り組んでいく必要があるだろう。

4.サプライチェーン改革のカギを握るDX投資

こうした拠点再編成をはじめとするサプライチェーン改革においてとりわけ重要な取組となるのがDXの推進だろう。自社生産・物流拠点のオペレーションを最大限に効率化させ、かつサプライチェーンに連なる各協力先とのシームレスな連動を実現するために必要な技術・ツールがITソリューションシステムであるからにほかならない。

ハード面でのロボットやMH機器などの自動化設備はすでに積極的な投資が進んでいるが、目に見えないDX投資については特に物流拠点において遅れているとの印象を受ける。これら自動化設備の運用は、WMS(倉庫管理システム)やWES(倉庫運用管理システム)、WCS(倉庫制御システム)との連携でそのポテンシャルを最大化するものであり、WMSは別として、WESとWCSの導入については自動化設備投資の一環として同時に進められることが多い。しかし、各協力先とのシームレスな連動を実現するためには、在庫や受発注、輸送車両のリアルタイムでの位置などの情報が共有化されることが必要であり、こうしたシステムへの投資はまだこれからという段階にある。

なお、こうしたバリューチェーンを志向したDXの推進で見逃してはならないのが、サプライチェーンの各協力先も含めた各段階における荷物に付されたデジタルデータの読み取り。ハンディターミナルやコードリーダなどの情報端末機器で行うこの作業にすべての基であるからで、近年はこれら情報端末機器の性能向上により、より効率的な作業が行える環境が整っている。DXを推進する中でこうした情報端末機器の最新情報にも触れ、適宜リニューアルを図っていくことも重要だろう。

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