Skip to content

<流通関連動向>EDI「2024年問題」と流通EDIの今後の展望 | ハンディターミナル | CASIO

検索

物流業界の事業通に聞く業界最新トピックス

<流通関連動向>
EDI「2024年問題」と流通EDIの今後の展望

text by月刊「LOGI-EVO」編集長 片岡信吾

月刊「LOGI-EVO」は、2021年8月に創刊されたあらゆる産業に関わるロジスティクスの総合専門誌です。

企業間取引情報を電子化してやり取りを行うEDI(Electronic Data Interchange)が転換期を迎えている。その利便性ゆえに導入が進んでいるEDIだが、その前提となる通信環境の変化に伴い、対応を迫られる企業が少なくないのだ。企業の対応が遅れてEDIによる取引に支障をきたせば、流通業界においてはサプライチェーンの停滞を招き、コストプッシュインフレ下での物価高騰にさらに拍車をかけ、消費を冷え込ませる事態も起き得る。

政府は我が国のデジタル化の遅れを取り戻すため、DX推進を重要政策に掲げているが、EDIはまさに企業間取引のDXを実現したものであり、先行していた取組がここで「足踏み」してはならないだろう。そこで本稿では、EDIの「2024年問題」を踏まえるとともに、特に影響の大きい流通サプライチェーンを重視し、今後の流通EDIについて展望する。

1.EDIの歴史と現状

(1)EDIの歴史

我が国におけるEDI導入の始まりは1970年代のことであり、自社専用の受発注システムとして大企業が導入したのが最初だった。欧米におけるEDI導入もほぼ同時期に始まっている。EDIはデータ形式や通信方法などについてあらかじめルールを決めておくことで成立するため、各社独自のEDIでは個別に通信設備・環境を整備する必要がある。EDIのルールが異なる取引先が複数ある場合は、それぞれの専用端末が必要となるほか、データ変換作業の手間もかかる。

EDIの歴史

そこで1980年代に入ると、EDI導入・維持にかかるコストを低減するため、標準化の研究が進展。流通業界では、日本チェーンストア協会と通産省(当時)が業界標準となるJCA手順を制定し、業界関係者にその導入を呼びかけた。1990年代にはインターネットが普及し始めたことから、ネット回線を利用したWeb-EDIが誕生している。

(2)EDIの現状

1990年代以降、Web-EDIが急速に普及し、その利便性と導入における手軽さが高く評価されていたが、標準化という面では、発注企業独自仕様のWeb-EDIが数多く誕生してしまったことで一時的に「後退」を余儀なくされた。現在は、ネット環境の共通言語であるXMLをベースとするインターネットEDIが登場し、業界別の標準EDIが数多く構築されている。

流通業界では、消費財流通業界関連団体と経済産業省が通信方式やメッセージ種類、データ項目の意味、使用するコードなどの標準化(流通システム標準化事業)を実施し、2007年4月に新たなEDI方式として「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準/Business Message Standards)」を公開し、利用の幅を広げている。

2.EDIの「2024年問題」とは

さて、EDIの「2024年問題」についてである。これはNTT東日本およびNTT西日本(以下、NTT東西)がPSTN(加入電話回線網)からIP網(インターネット・プロトコル・スイート 技術を利用して相互接続された コンピュータネットワーク)への移行を2024年1月から順次開始し、2025年1月に完了する(図表1)ことで、これまでPSTNを利用してきたEDIの運用に支障が生じる可能性があるというものだ。もともとこの移行は2020年に実施される予定だったものが、産業界からの反発により2024年に持ち越しになっていた。

経過措置としてNTT東西が代替サービスとなるメタルIP電話上のデータ通信を提供するため、PSTNを利用しているEDIがただちに使用できなくなるわけではないが、この経過措置も2027年ごろに終了する予定。さらに根本的なリスクとして、通信速度低下(通信時間が最大4倍程度かかるという)による受発注情報処理の遅延で商品の出荷・納品が遅れる可能性が指摘されている。EDI最大のメリットは効率性や迅速性であり、そのメリットが損なわれるとすれば、経過措置に甘んじて今しばらくの傍観を決め込んでいる場合ではないということが分かるだろう。

図表1 サービス移行に係る具体的な移行工程・スケジュール 図表1 サービス移行に係る具体的な移行工程・スケジュール

3.流通EDIの今後の展望

(1)インターネットEDIへの流れ

2024年問題への対応としては、Web-EDIもしくはインターネットEDIに早急に切り替えることが望ましい。経過措置の問題もあるが、そもそもEDIは取引先との双方向での取組であり、その移行は自社だけで実施できるものではないからで、相互に時間がかかる。またEDIの利用は、卸売業であれば、取引先小売業からの受注情報の受信、自社基幹システムで受注情報を処理した後の倉庫への取引先小売業店舗(もしくは物流拠点)への出荷指示、出荷情報の小売店舗への送信、請求データの送信、取引先メーカーへの発注、取引先メーカーの出荷情報の受信、取引先メーカーへの商品受領情報の送信、請求データの受信など多岐にわたり、その移行の手間を考えれば時間的に余裕がないことは明らかだ。

もっとも、Web-EDIとインターネットEDIの違いにも留意しなければならない。Web-EDIとインターネットEDIはともにインターネット回線を利用するものだが、前者が標準化されていない個別システムであり、異なるシステムとの情報の受発信に難点が残る一方、後者は世界共通の情報基盤を利用したシステムであるため、専用機器を準備する必要がなく、どの企業との取引も可能となる。こうした違いから2024年問題に対する解決策は、インターネットEDIへの移行がベターであると評価されているのだ。

(2)消費流通業界のEDI標準として期待される「流通BMS」

消費財流通業界では先にも触れた「流通BMS」がインターネットEDIの標準仕様として策定され、現在は流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)がその普及活動を展開している。専用機器は不要で、受発注から出荷・受領・検品・請求などに関連する情報を高速・低コストでやり取りすることが可能。メッセージ形式はXMLで、プロトコルは「JX手順」「AS2手順」「ebXML手順」のいずれかを選択することができる。業務プロセスの標準化のほか、2019年10月実施されている消費税軽減税率にも対応するものとなっている。また、2023年10月から実施されるインボイス制度(適格請求書等保存方式)についてもすでに対応するメッセージや運用ガイドラインなどがリリースされている。

「流通BMS」導入済み企業数は1万6,600社以上(2022年6月1日現在)に達しており、そのうち小売業206社(導入予定は17社)、卸売業・メーカー203社(導入予定は24社)が社名を公開(2022年12月1日現在)している。導入については、検討から運用開始までに6か月程度を要するとされており、①導入検討開始・プロジェクトの立ち上げ、②システム設計・取引先との調整、③システム開発・試験、④運用開始―といった手順を踏むことになる。実際には、EDIソリューションベンダーにシステム構築とサポートを依頼するのが確実で早道だろう。

(3)基幹システムやWMS、ハンディターミナルの見直しも重要

インターネットEDIへの移行に際し、基幹システムの見直しを進めることも重要だ。既存の基幹システムが今後の事業環境の変化に合わせて柔軟に対応できる構造になっていればいいが、カスタマイズを繰り返してきた結果、ブラックボックス化してしまっているレガシーシステムも少なくない。EDIシステムは、基幹システムと密接につながっており、WMS(倉庫管理システム)もまた同様だ。

インターネットEDI

インターネットEDIへの移行の機会をEDIだけに止まらせず、基幹システムやWMSなどに行き届かせることで自社のDXへの取組が全体最適化されたものになる。流通業界では特に倉庫における人手不足が顕著になっており、WMSの見直しを進めることで現場作業の生産性向上につなげたい。昨今はハンディターミナルについてもAndroid OS仕様への切り替えの動きが拡大しており、このことも踏まえ、ハンディターミナル(HT)も併せて見直しできれば、より競争力を強化できるに違いない。

ご検討中の⽅に、カシオのハンディターミナルを2週間無料でお試しいただけるサービスを実施中です。

気になるサービスや製品がありましたら、ぜひお問い合わせください。

Select a location