
OCEANUS Anatomy
パーツに息づく美学
OCEANUSが放つエレガントさは、精緻な技術と独創的なデザインが見事に融合しているからこそ、際立っている。その美しさは目に見える部分だけでなく、目立たない部分に至るまで、徹底されたこだわりによって支えられていると言えるだろう。そこで今回の「BLUE MOTIONS」は、時計のデザインの中で最も目を惹きがちなダイアルやベゼル以外の“普段注目されることの少ない”パーツ類にスポットライトを当て、これらの細部に宿る卓越した技術とエレガンスを徹底解剖することで、OCEANUSの美学により触れていただきたいと思う。
3本の針が指し示すもの
アナログ時計において、時刻を知るために欠かすことのできない長針・短針・秒針による3本の“針”。ダイアルという“時計の顔”の印象や表情を決めるだけでなく、視認性を追求する上でも重要な部品と言える。様々な形状が存在し、その種類は多岐に渡るが、OCEANUSでは初号機から続く菱形の「ローザンジュ針」やOCW-S3000以降で使用されるストレートの「バータイプ針」を採用。ともにスポーティさとエレガントさを兼ね備えながら、視認性に優れる形状にデザインすることで、存在感を演出している。
また近年ではClassic LineのOCW-T6000に代表される、アクティブな使用を想定した太く存在感のある針を採用することで、スポーティ感を高めつつ力強さも表現し、OCEANUSが多様性に富んだデザインを持ち合わせていることも打ち出している。 また常に動きを止めることのない秒針は、色や仕上げによって様々な表情を感じることができる重要な要素である。例えば、先端を白く着色することで端正でスポーティな印象に、またゴールドの秒針にしてエレガントな雰囲気を醸し出すなど。デザインの一部としてだけではなく、視認性や機能性も含め、モデルごとに細かく配慮して選定されているのだ。

左:Manta『OCW-S7000-1AJF』 / 右:Classic Line『OCW-T6000-1AJF』
そしてOCEANUSの針は、ただ単に時を刻むためのものではない。歩度による時刻のズレや磁気や衝撃による針自体のズレを補正したり、高速で針の早送りをおこなうことで瞬時に所望の時刻へと切り替え、最後は徐々にゆっくりと止まっていくような美しい針の動きなど。針の指針が"止まらない"、"狂わない"ための様々な機能を搭載し、我々に絶対的な安心感を与えてくれている。時を刻むその一瞬一瞬の動きが、OCEANUSの時計全体に生命を吹き込むかのように、スムーズかつ美しく時間を描き出しているのである。
操作する姿さえも美しく
2010年のOCW-T1000に多機能と優れた操作性を両立させる「スマートアクセス」を搭載したことに合わせ、初めて採用された“りゅうず”。OCEANUSのアナログウオッチとしての存在感を引き上げ、時刻修正などをおこなう上で、今や当たり前のように装備されている部品である。OCEANUSでは、巻き真と電子基板の間に接点を実装することで、りゅうずの引きや回転を時計が検知して針を動かす「電子式リューズスイッチ」を採用。小型モーターを多数搭載し、それぞれの針を独立して運針することで、スムーズで感覚的な操作感を実現するなど、この革新的な技術によってりゅうずを電子的な精度を持つ操作装置へと昇華させたのだ。OCEANUSのりゅうずは大きく2タイプに分かれ、基本的にエレガントさを重視するモデルには八角形を、実用性やスポーティさを重視するモデルには丸型を採用。その形は時計全体のバランスと調和を考慮し、緻密に設計された結果と言える。

上:Classic Line『OCW-T6000-1AJF』/ 下:Classic Line『OCW-T2600-1AJF』
そしてクロノグラフ操作に使用する“ボタン”は、ケースの流麗なデザインに合わせて、加工の手間がかかる薄型の異形のボタンを採用している。装着時での操作性(押しやすさ)を考慮し、極限まで計算してデザインされたそのフォルムは、時計全体の美しさを損なうことなく、機能を支える重要な役割を担っているのだ。
これらのりゅうずとボタンは単なる操作部品ではなく、OCEANUSのデザイン哲学と技術力を象徴する、時計の魂そのものと言っても過言ではない。
研ぎ澄まされた美の形跡
ダイアルやムーブメントを収める“ケース”、腕に装着するための“バンド”といった外装部品は、時計の本質を形作る核となる存在だ。OCEANUSを代表する薄く流麗なフォルムやシャープでソリッドなフォルムなど、その研ぎ澄まされたケースバンドデザインは、上質な仕上げによって完成される。
素材として採用されるのは加工が難しいとされる、軽量で肌にも優しい純チタン(一部ステンレスのモデルも有り)。最初の工程は「ザラツ研磨」と呼ばれる研磨作業を施すことから始まる。鍛造で作られた表面がデコボコしている部品を、高速回転させた紙やすりの貼ってある硬い鉄の円盤(ザラツ盤)に当てて表面を一皮削って整地し、平滑な面かつシャープなエッジを作り上げる。またそこにバフ研磨をすることで、歪みのない非常に美しいミラー仕上げ部品を作り上げることもできるのだ。これらの作業は職人の手でおこなわれ、丁寧に磨きあげることによって、平滑度の高い美しい輝きを実現している。
続いての工程は、この美しさと強さを守るための「チタンカーバイト処理」がおこなわれる。真空の釜の中でチタンを蒸発させ、炭素ガスを吹き込むことで生じる炭化チタンの膜を施すことで、表面を硬化。約0.0001mm程度という極薄の膜は、職人が仕上げた繊細な研磨面を埋めてしまうことはなく、表面に白い輝きを与えながらOCEANUSに永続する美しさと保護をもたらしているのだ。

Manta『OCW-S7000-1AJF』
極限まで削り込まれたケースや先端部を刃物で削ぎ落としたような形状、さらにラグ上面のミラー面を綺麗に仕上げるためにラグの先端まで入れたザラツ研磨など。光のリフレクションが綺麗に入ることは、流麗な印象を与えるケースデザインに欠かせない。
OCEANUSが追求する美は、単なる装飾にとどまらない。それは技術とエレガンスが完璧に融合した結果生まれるものであり、造形や仕上げに対する一切の妥協を許さないこだわりこそが、その真価を物語っている。
青に宿るスピリッツ
OCEANUSのエレガンスを象徴する“オシアナスブルー”は、単なる色彩表現を超えた存在だ。それは他ブランドと差別化を図るための重要な手法であり、表現したいテーマを具現化する青。独自の技術によって生み出され、時計全体に命を吹き込む要素となっている。蒸着・IP処理・スパッタリングといった高度な成膜技術を駆使し、透過率やパーツ形状、材質によってどの処理を使うかを選定し、さらにカスタマイズすることで、モデルごとに最適な色合いを落とし込み、これまで無数とも言えるオシアナスブルーを創り出してきた。

Manta『OCW-S6000-1AJF』
膜となる材料に熱を加えて蒸発させ、その蒸気を部品に付けることで成膜する「蒸着」、プラスとマイナスの電荷を帯びさせることで、より強靭な膜を形成する「IP処理」、イオンとなった原子や分子の粒が部品に積もることで成膜されていく「スパッタリング」。それぞれの技術が持つ特徴が、青の表現力を極限まで高めているのだ。
オシアナスブルーとは、コンセプトである“Elegance&Technology“を追求し、技術開発を絶え間なく繰り返しながら、進化を続ける色。OCEANUSが持つ美学を具現化する“海”のように心に響く青として、永続する存在なのである。
OCEANUSが考える機能美とは、細部に至るまでこだわりの精神が宿ってこそ真意を持つ。陰で支える個性的なパーツの魅力を知ることで、普段何気なく見ているOCEANUSに、さらに愛着が湧いてくるのではないだろうか。これからもOCEANUSは時計の常識にとらわれず、仕上げや色にこだわり、技術とデザインを進化させることで、時計作りの新たな次元へと挑み続けていく。

左から:Manta『OCW-S7000-1AJF』/ Manta『OCW-S6000-1AJF』/ Classic Line『OCW-T6000-1AJF』/ Classic Line『OCW-T2600-1AJF』
Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Daisuke Taniguchi
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