
The Sapphire of Elegance
Mantaに宿るサファイアガラスベゼルの美学
正確な時を刻むOCEANUSに、エレガンスという感性を与えるもの。それはディテールに宿る、美の追求である。フラッグシップのMantaシリーズにおいて、その象徴的な存在として輝くのが、サファイアガラス製のベゼルリングだ。光を受けて煌めく透明感と気品あるブルーの世界観は、機能美を超えた審美性を纏い、見る者を魅了する。高い硬度で日常の摩耗から時計を守るという実用性を備えながら、その姿はあくまで繊細で洗練されている。サファイアガラスという素材が、Mantaが体現する“精密と優雅”の精神を映し出し、腕元に静謐な存在感をもたらしているのである。今回のBLUE MOTIONSでは、このサファイアガラスベゼルがもたらす美の本質と、Mantaが目指すタイムピースとしての理想像に迫る。
伝統と革新が導いた、サファイアガラスという選択
Mantaで初めてサファイアガラスベゼルを大々的に採用したのは、2018年発売の『OCW-S4000C-1AJF』。さらなるエレガンスを追求する中で、江戸切子職人・堀口徹氏にベゼルの制作・監修を依頼し、Bluetooth® 搭載電波ソーラーを初めて取り入れた点でも話題を呼んだモデルである。江戸切子はガラス表面に繊細な文様を彫り出す伝統技法で、通常はクリスタルガラスのような硬度の低い素材が用いられる。しかし時計のベゼルは日常的に外部と接触しやすく、傷や衝撃への高い耐性が求められる部位だ。そこで着目されたのが、ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、優れた耐摩耗性を誇るサファイアガラス。透明度と屈折率が高く、光を美しく反射し、深い透明感を演出できることから、江戸切子との融合にふさわしい素材として採用されたのである。江戸切子サファイアガラスベゼルという新たなエレガンス表現を確立したMantaは、その後、漆芸の加飾技法である蒔絵とのコラボレーションにおいてもサファイアガラスを採用。こうしてサファイアガラスは、伝統と革新の融合を描き出すキャンパスとして、Mantaのデザインに欠かせない存在となっていった。
カッティングが描き出す、美しき時の輪郭

左:『OCW-S6000PB-7AJR』¥385,000(税込)/ 右:『OCW-S6000-1AJF』¥275,000(税込)
これまで、伝統工芸とのコラボレーションによる限定モデルのみで採用されてきたサファイアガラスベゼル。しかし2021年、ついに定番モデル『OCW-S6000-1AJF』にも、その革新的な素材が使用されることとなった。このモデルでは、従来の2倍となる厚さ約3mmのサファイアガラスをベゼルに仕上げて大胆に露出。宝飾品に用いられる“ファセットカット”技法によって、外形12面・斜面12面の計24面体へと精緻に加工し、ベゼル部分の外枠を排したフレームレス構造のチタンケースと組み合わせることで、側面からもサファイアガラスの美しさが堪能できるデザインに仕上げている。色調は、“紺碧の海”をイメージしたブルーブラックのグラデーション。蒸着とスパッタリング処理を複数回にわたり重ねることで、透明感の中に深みを感じさせるブルーの輝きが、見る角度によって表情を変えるベゼルを完成させた。そして、特筆すべきはそのケースの薄さである。存在感のあるサファイアガラスベゼルを用いながらも、部品の小型化や片面高密度基板実装、風防ガラスの平面化などにより、Bluetooth®や電波ソーラーを搭載しながら、厚さ8.7mmというManta史上最薄を実現。この記録は、4年経った現在もなお破られてはいない。

大胆なサファイアガラスベゼルが特徴的なOCW-S6000シリーズ。その後も、24面のファセットカットをベースに宝石研磨職人がランダムにカットしたモデルや、海の波をモチーフにした48面のスパイラルカットを採用したモデルなど、意欲的なバリエーションが次々と誕生してきた。そして今年、サファイアガラスベゼルのひとつの到達点とも言える、その魅力を最大限に引き出したモデル『OCW-S6000PB-7AJR』が登場した。まず驚かされるのは、カッティング技法そのものをOCEANUS専用に独自開発した点だ。サファイアガラスの外形に12面のファセットカットを施し、斜面には円錐状のラインを描くように加工。さらに表面には高度な技術を要する60面のコンケーブ(凹面)カットを丁寧に施し、光が凹面に入り込み複雑に屈折することで、これまでにない輝きと深みを演出している。着色技法にも革新が見られる。本物のプラチナを用いたグラデーション蒸着を初めて採用し、上下のブルーから両サイドのシルバーへと移ろう色彩は、空と海が水平線で交わり、まばゆい光を放つ幻想的な情景を想起させる。まさに美しい時の結晶として、その瞬間をベゼルに封じ込めたかのような仕上がりになっている。ラグジュアリー感を極めたこのプレミアムな輝きは、OCEANUSが掲げる“Elegance, Technology”の真髄を体現する、唯一無二のエレガントスタイルを確立したと言っても過言ではない。
青が語る、色彩美と時の情緒

前述のOCW-S6000シリーズの2本では、主にカッティング技法による造形表現に焦点をあててきたが、サファイアガラスベゼルの魅力はそれだけにとどまらない。透明感を湛えるサファイアガラスに色彩を重ねることで、光の差し込み方や角度によって無限の表情が生まれ、カッティングとは異なる情緒を引き出していく。その繊細なカラーリングはモデルごとの個性を際立たせ、時を纏う人の心を静かに惹き込むのである。この色彩表現において欠かせないのが、美しい海の世界観を映し出すブランドのアイデンティティ、“オシアナスブルー”だ。
中でもオシアナスブルーを色濃く打ち出したモデルが、2023年に発売された『OCW-S7000-1AJF』。クロノグラフを象徴する“タキメーターベゼル”にサファイアガラスを採用し、ミニマルなリング形状へと進化した造形美は、全体のデザインにモダンで洗練された印象を与えている。色調は、紺碧の海を連想させる深く落ち着いた青。丁寧に磨かれたサファイアガラスの裏面からブルー蒸着を施し、見る角度や反射する光の強弱によって変化する美しくも儚い輝きは、まるで海のような表情を醸し出す。まさに知性と気品を湛えた“オシアナスブルー”の象徴的なトーンと言えるだろう。

そして同じフォルムでありながらも異なるブルートーンで魅せるのが、今年新たに誕生したコレクションの『OCW-S7000RA-2AJF』だ。レトロな佇まいのOCEANUSとして、タイムレスなクラシックスタイルを追求したこのモデルは、新開発のフロストサファイアガラスを採用。天面をレーザー加工によってハーフマット調に仕上げ、裏面から奥行きのある青を着色することで、まるで霜が降りたような独特の光沢感を創出。柔らかく取り込んだ光によって、控えめで落ち着いた輝きを放つ蒼のヴェールは、彩度を抑えたグレイッシュなオシアナスブルーの表情をゆったりと遷移させる。
サファイアガラスという素材に託されたのは、単なる装飾性ではなく、時を美しく魅せるための必然である。精緻なカッティングによる造形美、光と色彩が織りなす青の深淵、そのすべてがMantaの哲学を映し出している。正確無比な時を刻むテクノロジーと、エレガンスを極めたディテールの融合。そこに宿るのは、計器としての役割を超えた“時の美”という概念だ。サファイアガラスベゼルは、まさにその象徴であり、Mantaが目指すタイムピースとしての理想像“機能と美が調和する、静かで力強い存在感”を体現する結晶なのである。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Daisuke Taniguchi
Bluetooth® / MULTIBAND 6 / TOUGH SOLAR /
Premium Production Line
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