The Ultimate Black Manta
月夜の海を照らす“究極の黒”
今冬のメインモデルとして11月14日に発売された、江戸切子サファイアガラスベゼルのManta『OCW-S7000CN』。6度目となる“伝統と革新の融合”によって生み出された意匠美については、前回のBLUE MOTIONSで紹介したが、その技術革新をさらに進化させた特別仕様の限定モデル『OCW-SG1000CN』も同日に発売された。新たなテクノロジーを搭載し、さらなる革新を実現したこのモデルは、まさにその“融合”を昇華させた逸品である。
Manta『OCW-SG1000CN-1AJR』 ¥682,000(税込)世界限定600本
伝統が刻む、月光の煌めき
デザインテーマは『OCW-S7000CN』と同じく、月明かりが静かに差し込む夜の海を想わせる「CALM NIGHT」。その象徴となるのが、江戸切子職人・堀口徹氏監修によるサファイアガラスベゼルである。リング形状のサファイアガラスをベースにした『OCW-S7000CN』に対し、『OCW-SG1000CN』では24面ファセットカットを施した厚みのあるサファイアガラスを採用。3時から9時のセンターラインを空と海の境界線に見立て、ベゼル天面の上半分をフラットに、下半分をランダムな面構成に仕上げることで、わずかな角度の差によって光の屈折を操る。そこに切子文様「千筋」によるシャープなカッティングラインを、上半分の表面に20本(OCW-S7000CNは裏面に16本)、下半分の裏面に12本(OCW-S7000CNと同様)刻むことで、夜空から海面へと光が降り注ぐ軌跡を表現。ブラックとシルバーのグラデーション蒸着が、その移ろう光を繊細に映し出す。この黒は、光を拒むための黒ではない。光を抱き、静かに内側から輝きを返すための黒である。蒸着層を透して青く偏光するその輝きは、OCEANUSが宿す“海の記憶”を想わせる。匠の技と精密な加工技術が融合して生まれたこのベゼルは、静かな波間に浮かび上がる芸術そのものだ。
月面を宿す革新の鼓動
そして『OCW-SG1000CN』のキャラクターを最も強く印象づけるのが、ダイアル外周をカットアウトし、日車を大胆に露出させた独創的なフェイスである。月面をモチーフにデザインされたダイアルは、型打ちで目付を施した金属素材を使用し、煌々と輝く月の表情を写し取った立体感のある陰影と、細かい砂に覆われた質感を表現。そこにメッキと塗装を重ねてブラックに着色し、塗膜ラップ処理を施すという、手の込んだ仕上げがなされている。さらに肉抜き加工を施した金属製の日車にはグレー蒸着を、ダイアルリングにはブラックIPをあしらうなど、各パーツに異なる着色を施しながら、ダイアル全体をモノトーンに統一。静謐でありながらも奥行きを感じさせる表情を生み出している。
この、従来の半透過素材のダイアルでは実現できなかった自由度の高い装飾・加工・仕上げを可能にしたのが、新たなソーラーモジュール”ガリウムタフソーラー”である。昨年のカシオウオッチ50周年記念モデルに続き2度目の採用となるこのシステムは、近年注目を集めるガリウム化合物を基盤材料とし、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」にも搭載された太陽電池技術を応用。世界で初めて腕時計用に開発された、カシオ独自の発電システムだ。これにより、宇宙環境にも耐える高い信頼性を備えつつ、従来比で約2〜5倍もの発電効率を実現。三日月型のソーラーセルを日車の下に配置することにより、日付表示のわずかな隙間に差し込む光で発電し、電波受信などの各種機能を安定して駆動させている。
月を想わせる意匠と、宇宙に通じる技術。そのエレガンスは、見えないところに積み重ねられた精緻な技術によって支えられている。美しさと機能の調和。それこそが、OCEANUSの追い求める”時の本質”と言えるだろう。
匠と先進が紡ぐ、時の美学
美しさはフェイスデザインだけに止まらない。精悍なオールブラックにまとめられたケースとバンドは、DLC処理によってチタン素材表面の耐摩耗性を向上。さらに鏡面研磨とヘアライン仕上げを部位ごとに使い分け、光の流れを繊細に制御。反射を抑えつつも、柔らかな艶を纏い、月光に揺れる水面のような陰影を描き出している。
今回の『OCW-SG1000CN』は、世界限定600本の特別仕様モデル。月夜の海を描く”時の美”の物語を結ぶのは、裏蓋に刻まれた月のエンブレムである。DLCコーティングとレーザー処理で陰影に差を出し、月面の質感を表現。その中心に浮かぶOCEANUSのロゴは、月明かりの下に静かに輝く海を想わせる。ダイアルから内部構造に至るまで、月のモチーフが呼応しながら、このモデルの世界観を紡いでいるのだ。また裏蓋には、限定モデルの証となるシリアルナンバーを刻印。加えて、月夜の海が描かれた上質感あふれる専用のパッケージを設えた。
月が沈むことは、光が終わることではない。その静けさの奥で、次の輝きはすでに息づいている。江戸切子の匠の技と、ガリウムタフソーラーの革新が描く”黒の完成形”。Mantaが辿り着いたのは、夜の静寂の中で光を刻む、新たな”時の美”の新境地である。その光は時の彼方で、未来を静かに照らしている。
Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Daisuke Taniguchi
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