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ブルーモーション5月号 メインビジュアル

Indigo Ocean Vol.2

New阿波藍モデル ── 青の再定義

藍は、本来“均一にならない色”である。前回のBLUE MOTIONSで触れた阿波藍の魅力は、その揺らぎと個体差にあった。そして今年、OCEANUSはその藍に対する向き合い方を、もう一歩先へと進めている。これまでのモデルが、藍という素材そのものの魅力、すなわち“藍染”をいかに時計の中で表現するかに重きを置いていたのに対し、今回の阿波藍モデルでは、藍をひとつの“表現手法”として捉え直している。藍であることが目的ではない。藍を通して、OCEANUSが考える“青”をどう描くか。今月登場する『OCW-S7000AP』と『OCW-T2600AP』は、その新たなアプローチを体現した2本だ。本号では、デザイン・構造・機能の各側面から、その完成度を読み解いていく。

左:Classic Line『OCW-T2600AP』/ 右:Manta『OCW-S7000AP』

左:Classic Line『OCW-T2600AP』/ 右:Manta『OCW-S7000AP

青を描く、二層のダイアル

今回のモデルにおける文字板は、単なる素材表現ではない。“藍を使って、海を描く”という明確な意図のもとに設計されている。そのために採用されたのが、二層構造のダイアル。上層で光を制御し、下層で藍の表情を引き出す。異なる役割を持つレイヤーを重ねることで、単一の素材では到達できない奥行きとニュアンスを生み出している。
上層に用いられているのは、ブラック蒸着による深い色調。これは藍染においてこれ以上染まらないとされる、ほぼ黒に近い「留紺」をイメージしたものだ。ここで重要なのは、この層が“主張しすぎない”ことにある。光の反射を抑えることで、下層に配置された阿波藍の色彩と輝きを引き立てる。さらに、透明マット印刷による波模様を重ねることで、視認性を損なうことなく質感を付加。強く主張するのではなく、光の角度によってわずかに浮かび上がる設計は、日常使用における視認性と表現性の両立を意図したものだ。この抑制された表現は、藍そのものを見せるためではなく、“藍を通して生まれる景色”を成立させるための設計といえる。

OCW-S7000AP アップ

下層には、阿波藍で着色された白蝶貝を採用。ここでは、自然素材の個体差をいかに“製品として成立させるか”が大きなテーマとなった。伝統的な沈殿法によって生成された青藍粉を用いながら、発色の深さ、光の反射、素材の模様の出方といった要素を個体ごとに緻密に調整。均質化するのではなく、差異を活かしながら全体としての完成度を保つ設計がなされている。さらに3つのインダイアルはそれぞれ異なるトーンで構成され、手前から遠方へと濃淡が移ろうことで、広がりのある海のイメージを形成。機能としての視認性を担保しながら、視覚的なストーリーを内包している。3つのインダイアルが描き出すのは、単なる装飾ではなく、OCEANUSが再解釈した“海の青”。それは伝統の再現ではなく、新たな景色の創出に他ならない。

OCW-T2600AP アップ

光と質感を制御する外装設計

文字板の表現と呼応するように、外装にも精密な色彩設計が施されている。鏡面仕上げのベゼルには、新色のネイビーIPを採用。硬質な輝きと深みのある濃色によって、フェイス全体を引き締める。さらに両モデルでは、それぞれ異なる構造特性を活かした加飾表現を採用している。
ベゼルそのものの存在感を前面に打ち出す『OCW-S7000AP』は、サファイアガラスリングにブルーグラデーション蒸着を施すことで、高い透明度と耐傷性を確保しながら、光の透過による繊細な色彩変化を創出。その表情はMantaを象徴する薄型ケースと相まって、シャープでありながら流麗な印象を形成している。さらにベゼルに刻まれたタキメーター表示もブルーの層へ自然に溶け込み、スポーティな機能美をさりげなく際立たせた。

OCW-S7000AP 横から

一方、『OCW-T2600AP』は、文字板見切り部をブルーグラデーション塗装で着色し、視認性を優先しつつ、ダイアルとの一体感を高める構成に。文字板中心から青が滲むように広がる色彩表現に加え、ワールドタイム用の都市コードがダイアル外周で青の輪郭を描き、Classic Lineの端正なフェイスに精緻なアクセントを添えている。
いずれも、デザインと機能を切り離すことなく、一体として完成させるための選択といえる。

OCW-T2600AP 横から

両モデルに採用されているチタン素材は、軽量でありながら高い強度と耐食性を備える。長時間の装着においても負担が少なく、日常使いに適した特性を持つ。さらにTICコーティングを施すことで、表面硬度を向上。擦り傷に強く、美しい外観を長期間維持することが可能となっている。仕上げにはザラツ研磨を採用。歪みのない鏡面は光をシャープに反射し、藍の深い色合いとのコントラストを際立たせる。金属の持つ硬質な輝きと、藍の有機的な表情。その対比こそが、このモデルの外観に緊張感と奥行きを与えているのである。

精度という、もうひとつの完成度

そして外観の美しさを支えているのが、確かな時刻精度と実用性だ。Bluetooth®搭載電波ソーラーを採用した『OCW-S7000AP』は、標準電波受信に対応することはもちろんのこと、スマートフォンとの連携により、世界約300都市の時刻修正にも対応。環境に依存しない高精度を実現している。マルチバンド6対応の電波ソーラー『OCW-T2600AP』は、世界6局の標準電波を受信し、常に正確な時刻を維持する。シンプルかつ確実な運用を重視した構成だ。両モデルともタフソーラーを採用し、定期的な電池交換を不要とすることで、日常使用におけるストレスを軽減している。

今回の2モデルに共通するのは、阿波藍を”青を設計するための起点”として捉えていること。素材の再現にとどまらず、構造・光・機能を横断しながら“青”そのものを再定義する試みとなっている。日本の伝統色を、現代の機能美へ。阿波藍が魅せる青の表情は、OCEANUSが見据える新たな海のかたちへと導いていく。

左:Classic Line『OCW-T2600AP』/ 右:Manta『OCW-S7000AP』

そして次号では、シリーズのもうひとつの中核を担うモデル『OCW-S6000AP』を特集する。青の表現は、さらに深い領域へと進んでいく。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Daisuke Taniguchi

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