Time in Leather
革と重ねる、時の美学
先進技術と日本ならではの美意識を融合し、時代とともにエレガンスを追求してきたOCEANUS。ブランド誕生から20年を経て昨年登場した「RETRO TONE COLLECTION」は、これまで培ってきた伝統や美学に現代的な解釈を加えることで、OCEANUSに新しい表情を生み出した。 そして今夏、そのラインアップに本革バンドを採用した2モデルが新たに加わることとなった。メタルから革へと素材を置き換えただけ、と捉えるのは少し違う。時間を刻む時計と、時間を重ねるほど味わいを増す革。その組み合わせは「RETRO TONE COLLECTION」が掲げる“タイムレス”という価値に、もうひとつの時間軸をもたらす。
時を映すグラデーション
「RETRO TONE COLLECTION」の印象を決めるのが、ハーフマット調のグラデーションダイアル。新規開発の金型によって梨地のようなハーフマット調に仕上げた文字板表面に、シルバー蒸着、カラー塗装、グラデーションパターン印刷という3層の着色を重ね、中心から外周へ向かって色と光が溶け合う奥行きを創出。ソーラーチャージに必要な受光量を確保しながら、透過率を緻密にコントロールすることで、発色のよい文字板を実現した。時分針はテーパードを抑えたシンプルなストレート型。秒針には光を反射しやすい半円形の甲丸立体針を採用し、視認性にも配慮。ソリッド感のあるバーインデックスや、ローレットを刻んだりゅうずなど、細部まで端正に仕上げることで、時代に左右されないクラシカルな佇まいを生み出しているのだ。
今回の2モデルは、こうした共通の意匠をベースとしながら、それぞれ異なる色彩と表情を見せている。
まずは、上質なスリムスタイルを追求するMantaの3針モデル『OCW-S400RL』。グレーのグラデーションダイアルを基調に、ベゼルなどに配したローズゴールドIPが穏やかなコントラストを添えている。時・分・秒針というシンプルな3針構成が生む端正さと相まって、すっきりとした佇まいが魅力である。さらにベゼルリングにも「RETRO TONE COLLECTION」ならではのこだわりが。素材に選ばれたのは、硬度と透明度に優れたサファイアガラス。その天面にレーザー加工を施し、ハーフマット調に仕上げている。霜が降りたような独特の質感を持つベゼルリングは、光をそのまま跳ね返すのではなく、柔らかく取り込むことで、色彩に繊細なニュアンスを与える。シャープなケースフォルムと、淡い光を纏ったベゼル。異なる質感を組み合わせることで、洗練された存在感のなかに、どこか懐かしさを感じさせる表情を生み出している。
Manta『OCW-S400RL』
続いて、ソリッドなデザインが魅力のClassic Line『OCW-T2600RL』。グリーンのグラデーションダイアルを基調に、文字板見切りなどに配したローズゴールド蒸着がアクセントに。3つのインダイアルを備えたクロノグラフフェイスに、深みのあるグリーンを重ねることで、落ち着きのなかにも個性が宿る、クラシックな計器を思わせる密度が生まれた。またフラットなベゼルがフェイス全体を引き締め、機能美を感じさせる佇まいに仕上げているのも特徴だ。
同じグラデーション表現とローズゴールドを共有しながら、『OCW-S400RL』は静謐に、『OCW-T2600RL』は重層的に、その個性を際立たせている。2モデルを並べることで、「RETRO TONE COLLECTION」が持つ表現の幅もより鮮明になる。
Classic Line『OCW-T2600RL』
時を重ねるほど、味わい深く
そして今回の2モデルを語る上で欠かせないのが、レザーバンドである。採用されたのは、1937年創業の日本を代表する皮革製造専門メーカー「栃木レザー株式会社」が手掛ける牛革。樹皮など天然素材から抽出したタンニンを使い、ピット槽を用いてじっくりと鞣す伝統的な製法“フルベジタブルタンニン鞣し”によって仕上げられている。その工程は20にも及び、時間と手間を惜しまない職人たちのこだわりが詰め込まれた革は、使用を重ねるほどに柔らかくなり、手にしっとりと馴染む質感へと変化していく。最初から完成された美しさを楽しむのではなく、腕に着け、日々の時間をともに過ごすことで、自分だけの表情が現れてくる。そんな時間とともに色艶が深まっていく美しいエイジングも、この革ならではの魅力だ。変わらぬ精度を守るOCEANUSと、変化を受け入れる革。対照的な二つの性質と時間軸が共存するこの時計は、まさに“タイムレス”な魅力を放つ「RETRO TONE COLLECTION」の真骨頂である。
そして、このレザーバンドが時計そのものの佇まいにも変化をもたらしている。メタルバンドが持つ硬質な印象に対し、革は光沢を抑え、腕元に落ち着きと温度を与える。ローズゴールドの柔らかな色調とも相性がよく、オーセンティックでありながら、どこかドレッシー。レザーバンドがクラシックなムードを深める一方、シャープなケースと緻密に仕立てた文字板には、OCEANUSらしいモダンな感性が息づく。薄さを追求するMantaの『OCW-S400RL』のケース厚は9.2mm。3針の簡潔なフェイスと革バンドの組み合わせが、そのスリムさをいっそう上品に見せる。対する『OCW-T2600RL』のケース厚は10.7mm。ワールドタイムやストップウオッチなどを備えた多機能でありながら、黒のレザーバンドを合わせることで、スポーティな印象が程よく抑えられ、クラシックな佇まいが引き立っている。ビジネススタイルに合わせても、休日のカジュアルな装いに合わせても。着飾るためではなく、日常のなかで自然に着こなす。ともに、そんな現代的なクラシックスタイルを楽しめるモデルである。
時とともに完成する、タイムレス
変わらないものをつくるために、変化を受け入れる。『RETRO TONE COLLECTION』が目指す普遍性とは、過去の形をそのまま残すことではないのだろう。時代に合わせて解釈を更新し、身に着ける人が過ごす時間さえもデザインの一部にしていくこと。使うほどに馴染み、艶を増していくレザーバンドは、その考えをこれまで以上に鮮明に映し出している。新品の瞬間だけで美しさを完結させず、使い込んだ先の表情まで魅力へと変えていく。その発想こそが、今回のレザーバンドモデルにさらなる奥行きを与えている。正確に時を刻み続ける時計と、時とともに表情を変える革。ひとつは時間を測り、もうひとつは時間を残す。その対照的なふたつが重なったとき、OCEANUSのレトロは、懐かしさではなく“これから”を語り始める。
Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Tsukasa Nakagawa
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